国内の感染状況の分析

5月25日に緊急事態宣言が残っていた北海道と東京、神奈川、千葉、埼玉でも解除されるらしい。解除後の再拡大や秋以降と思われる第2波(おそらくは第3波)に注意はしなければならないが、いちおう一区切りついたのだろう。

 

ということで、これまでの感染状況を振り返っておきたい。

 

以下は、国立感染症研究所(NIID)がまとめた「SARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査」の遺伝子型によるマップである。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/467-genome/9586-genome-2020-1.html

 

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これによると、日本に初期の発生は中国から来たものであり、3月以降急激に感染拡大したのは、欧州型であることがわかる。

 これを、中国、韓国、イタリア、日本の感染確定者新規発生件数のグラフで確かめてみる。なおグラフは新規感染者数の7日間の移動平均で表している。

 

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これを見ると、中国で発生したウイルスは半月ほどのディレイを持って韓国に伝搬。さらに中国から2か月ほどディレイしてイタリアに渡ったことがわかる。一方日本は、早い段階からだらだらと感染が拡大し、イタリアから1ヶ月ほど遅れて感染が急激に拡大している。

 

ここで、韓国の図と日本の3月20日ころまでの図を比べてみよう。

 

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日本では韓国とほぼ同じ時期に感染が拡大し、3月20日ころには収束の方向が見えていた。ところがこの後、日本では急激に感染が拡大している。

 

下図は、感染ルートを示すグラフである。

 

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3月中旬くらいから、渡航歴のある感染者が増えてきて、そのあと感染ルート不明や接触による感染者が爆発的に増えている。国立感染症研究所の分析とこれらのグラフから読み取れるのは、日本に於いては、中国からの感染拡大は非常にうまく防げていたが、欧州からの帰国者などが持ち込んだ欧州型のウイルスの感染拡大を防げなかったということである。これが実際の第2波であろう。

 

さて巷間、オリンピックをやりたいがために、政府や都が検査数を絞って感染者数をごまかしていたのに、3月24日に延期を決めた後は感染者を隠さなかったとささやかれている。

 

しかし、上記の分析によれば、中国由来のウイルスについてはほぼ完全に抑え込めていたためにオリンピック開催に前向きであったが、感染拡大の端緒が見えてきたときにそれを素早く検知し、また国外での感染拡大を見てオリンピック延期を決定したというのが正しい見方ではないだろうか。

 

政府の最大の失策は、欧州での感染拡大が見えてきたときに欧州その他からの来訪者、帰国者に十分な検疫を行わなかったことであろう。京産大生卒業旅行からのクラスター発生など、もし3月の早い時期から2週間の経過観察ができていれば、これほどまでの感染拡大はなかったであろう。

 

実際には来訪者、帰国者を拘束する法的根拠はないのであるが、ここはぜひとも今のうちに法整備を行い、確実に入国者を一定期間市井に入れないようにしなければならない。